企業が事業活動を行う上で、「資金繰りが問題なく行えている」ことはとても重要です。
資金繰りに問題があると倒産してしまうリスクも高くなるからです。
資金繰りが大丈夫かどうか?をチェックするためには下記の4つの指標を見ることをおススメします。
- 運転資金
- 売上債権回転期間
- 棚卸資産回転期間
- 仕入債務回転期間
今日はこの4つの指標の中から、仕入債務回転期間について解説していきます。
仕入債務回転期間の意味と、計算式を教えて!
仕入債務回転期間の目安は?業種によっても違うの?
質問ありがとう!
一緒に勉強していこう!
【わかりやすく解説】仕入債務回転期間の意味/計算式/目安
仕入債務回転期間とは、仕入債務を効率よく支払えているかを測る指標になります。
もう少しかみ砕いて説明します。
企業は営業活動をするために取引先(仕入先)から商品や原材料を仕入れます。
仕入れた商品や原材料の代金を取引先(仕入先)に対して支払う必要がありますが、その支払い代金を支払うまでの期間のことを仕入債務回転期間といいます。
ある意味、ツケ払いを待ってもらえる期間のことだね!
仕入債務回転期間の計算式は下記の通り求めることが出来ます。
仕入債権回転期間(ヶ月)=仕入債務÷月売上原価(年間売上原価÷12)
仕入債務回転期間は長ければ長いほど仕入れ先にツケ払いを待ってもらっている状態なので、資金繰りとしては楽になります。
目安としては〇ヶ月という期間よりも、仕入債務回転期間>売上債権回転期間が理想です。
売上債権回転期間は過去記事でまとめていますのでそちらをご参照ください。

仕入債務とは、将来支払う必要のあるお金のこと(取引先に対してのツケ払いのこと)です。
下記2点が仕入債務に該当します。
- 買掛金
- 支払手形
【実践】仕入債務回転期間を自分で計算してみよう!
では実際に仕入債務回転期間を自分の手で計算してみましょう。
私の好きな企業の1つであるブリッジインターナショナル(7039)の有価証券報告書を参考に見てみましょう。
- 仕入債務:買掛金の53,042(千円)
- 月商:売上原価の2,578,380(千円)÷12(ヶ月)=214,865(千円)
仕入債務回転期間=仕入債務(53,042)÷月売上原価(214,865)=0.25ヶ月

簡単に計算出来るでしょ?
ブリッジインターナショナルは仕入債務回転期間が0.25ヶ月と短いんだね。
補足:売上債権回転期間と仕入債務回転期間を比較してみよう
ブリッジインターナショナルの仕入債務回転期間は先ほど計算した0.25ヶ月でした。
仕入債務回転期間が売上債権回転期間より長いと企業としては資金繰り効率が良いと言えますが、どうでしょうか?
売上債権回転期間は過去記事で算出しているので、それを使うと2.5ヶ月です。

理想は仕入債務回転期間>売上債権回転期間ですが、ブリッジインターナショナルの場合は仕入債務回転期間<売上債権回転期間でしたね。
ただ、気にする必要はなくて現金及び預金が十分にありますので、仕入債分を現金で補うことが可能なのでブリッジインターナショナルは安心です。
【業種比較】仕入債務回転期間の目安とは?
仕入債務回転期間は業種ごと多少違いますので、気になる企業の仕入債務回転期間を調べる場合は同業他社と比較して見ることをおススメします。
業種ごとに調べるためには、政府統計の総合窓口( e-Stat)の中小企業実態基本調査が参考になります。
中小企業実態基本調査 令和2年確報(令和元年度決算実績) 確報 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)
政府統計の総合窓口( e-Stat)のデータをもとに、業種ごとの仕入債務回転期間を求めてみました。
業種 | 仕入債務回転期間 |
---|---|
建設業 | 1.7ヶ月 |
製造業 | 1.8ヶ月 |
情報通信業 | 1.4ヶ月 |
運輸業、郵便業 | 1.0ヶ月 |
卸売業 | 1.8ヶ月 |
小売業 | 1.0ヶ月 |
不動産業、物品賃貸業 | 2.1ヶ月 |
学術研究、専門・技術サービス業 | 1.9ヶ月 |
宿泊業、飲食サービス業 | 1.0ヶ月 |
生活関連サービス業、娯楽業 | 0.6ヶ月 |
サービス業(他に分類されないもの) | 1.1ヶ月 |
みなさんの気になる企業業種の仕入債務回転期間はいかがでしょうか?
ぜひ、ご自身の気になる企業だけでなく同業他社とも比較して調べてみてください。
仕入債務回転期間で仕入れ先との力関係が読み取れる!?
一概にそうだと言えるわけではありませんが、仕入債務回転期間を見れば仕入れ先との力関係が読み取れたりします。
なぜかというと、仕入債務回転期間が長いということは仕入れ先に対してツケ払いを長く待ってもらっているということなので、多少なりとも仕入先に対して有利な状態であることが言えます。
仕入債務回転期間が長い(ツケ払いを長く待ってもらえる)ということは、仕入れ先よりも交渉力が強い可能性があります。
逆に仕入債務回転期間が短い場合は、仕入れ先よりも交渉力が弱い可能性があります。
一概にそうだと言えませんが、財務からこのような推測が出来るというのは面白いですよね。
仕入債務回転期間をチェックする場合は、単年ではなく複数年(最低でも3年)で見ましょう。
複数年で仕入債務回転期間を見た時に、仕入債務回転期間が大きく変化している場合は仕入れ先との関係に何か変化があったのでは?と調べてみましょう。
もしかすると力関係に変化があった?仕入先が変わった可能性が考えられます。
まとめ
仕入債務回転期間について解説してきました。
理想としては仕入債務回転期間>売上債権回転期間ですが、現金をしっかり保有している会社であれば仕入債務回転期間<売上債権回転期間でも全く問題ありません。
関心のある企業の仕入債務回転期間は一度調べてみても面白いかと思います。