良い銘柄が見つかったと思ってPERを見てみると、驚くほど高い時ってないですか?
もしくはPERが低いと思って買ってみたけど、そこから大暴落した…という経験はないですか?
日本株の平均PERは15倍と言われていますが、全ての業界に当てはまるのでしょうか?
・PERって業界別で違いはあるの?
・業界別の平均PERってどこで調べれば良いの?
・そもそもPERって何?分かりやすく解説して
お任せください!
本日はカブ太郎さんの疑問を解決する記事を書きますね。
【注意】|業界で平均PERの目安は違う。15倍以下は割安に騙されてはダメ
結論から先にいうと、業界で平均PERの目安は違ってきます。
日本株の平均PERは15倍なので、「15倍を下回っている会社の株は割安です」とよく言われますが、鵜呑みにしてはいけません。
もしかすると知らず知らずのうちに割高銘柄を掴んでいる可能性があります。
では早速業界別の平均PERについて見てみましょう。
どこから調べることが出来るかというと、日本取引所グループのホームページから調べることが出来ます。
毎月の業界別平均PERがExcelにまとまっていますので、こんな感じで調べることが出来ます。

ただ、文字が小さすぎるので市場一部だけ、表にしてまとめてみました。
市場区分名 | 種別(業界別) | 単純PER(倍) | 加重PER(倍) |
市場一部 | 1 水産・農林業 | 15.6 | 16.4 |
市場一部 | 2 鉱業 | 59.8 | - |
市場一部 | 3 建設業 | 10.6 | 10.6 |
市場一部 | 4 食料品 | 24.1 | 22 |
市場一部 | 5 繊維製品 | 93.8 | 60.5 |
市場一部 | 6 パルプ・紙 | 20.6 | 13.4 |
市場一部 | 7 化学 | 22.4 | 28.9 |
市場一部 | 8 医薬品 | 23.2 | 25 |
市場一部 | 9 石油・石炭製品 | 6.6 | 10.3 |
市場一部 | 10 ゴム製品 | 21.9 | 91.6 |
市場一部 | 11 ガラス・土石製品 | 26.5 | 20.9 |
市場一部 | 12 鉄鋼 | 22.1 | - |
市場一部 | 13 非鉄金属 | 14 | 15.6 |
市場一部 | 14 金属製品 | 13.9 | 19.8 |
市場一部 | 15 機械 | 33.6 | 35.4 |
市場一部 | 16 電気機器 | 28.5 | 25.6 |
市場一部 | 17 輸送用機器 | 51.7 | 22.3 |
市場一部 | 18 精密機器 | 25.2 | 56.6 |
市場一部 | 19 その他製品 | 18.4 | 19 |
市場一部 | 20 電気・ガス業 | 15.6 | 10 |
市場一部 | 21 陸運業 | - | - |
市場一部 | 22 海運業 | 6.9 | 6.3 |
市場一部 | 23 空運業 | - | - |
市場一部 | 24 倉庫・運輸関連 | 11.9 | 10.8 |
市場一部 | 25 情報・通信業 | 26.4 | 9.2 |
市場一部 | 26 卸売業 | 16.8 | 18.1 |
市場一部 | 27 小売業 | 93 | 59.4 |
市場一部 | 28 銀行業 | 9 | 9.9 |
市場一部 | 29 証券、商品先物取引業 | 7.8 | 10 |
市場一部 | 30 保険業 | 11.4 | 10.2 |
市場一部 | 31 その他金融業 | 11.4 | 13.1 |
市場一部 | 32 不動産業 | 16.4 | 17.9 |
市場一部 | 33 サービス業 | 180.4 | 76.1 |
如何でしょうか?
結構ばらつきがありますよね。
例えば、「情報・通信業」であれば、平均PERが26.4倍と日本株の平均PER15倍を大幅に上回っています。
逆に「銀行業」であれば、平均PERが9倍と日本株の平均PER15倍を大幅に下回っています。
なので、もし「銀行業」の銘柄をPER15倍で買ってしまうと”割高”銘柄を掴んでいるということになります。
ちなみに、PERには単純PERと加重PERがあるので、簡単に解説します。
- 単純PER:単純に全企業のPERを平均化したもの
- 加重PER:時価総額ベースで全企業に重みを付けてから平均化したもの
単純PERは株価が高い銘柄の影響を強く受け、加重PERは時価総額の大きな銘柄の影響を強く受ける特徴があります。
よって、単純PERは時価総額が小さい企業のPERを見る時に適しており、加重PERは時価総額の大きい企業のPERを見る時に適していると言われています。
ちなみに先ほど示したのは市場一部だけですが、市場二部、マザーズ、JASDAQでPERばらつきがあります。
各市場ごとでどれくらいのバラツキがあるか見てみましょう。
市場区分名 | 単純PER(倍) | 加重PER(倍) |
市場一部 | 25.8 | 21.2 |
市場二部 | 27.4 | 35.6 |
マザーズ | 232.5 | - |
JASDAQ | 29.2 | 35.6 |
特にマザーズ市場の高いPERに驚くのではないでしょうか。
【解説】業界ごとのPERの調べ方
では業界ごとのPERをどうやって調べれば良いかについて解説していきます。
先ほども述べましたが、日本取引所グループのホームページから調べることが出来ます。
図解で解説します。
- GoogleやYahoo!などで「日本取引所グループ」と検索
- 日本取引所グループのホームページに入ったら、検索窓に「PER」と入れて検索
- 「その他統計資料|日本取引所グループ」が出てくるので、こちらをクリック
- 最後に、最新月のExcelを取り出せば業界別のPERを調べることが出来ます



これで業界ごとのPERを入手することが出来ました。
気になる指標としてPBRもありますが、こちらは改めて別の記事で紹介したいと思います。
PBRも割安性を調べる上でとても重要な指標になってきます。
【基礎講座】そもそもPERってなに?~分かりやすく解説します~
最後に「そもそも”PER”ってなに?」について解説していきたいと思います。
PERとは、Price Earnings Ratioの略で、日本語で株価収益率ともいいます。
一言でいうとPERとは、企業の株価の割安性を測る”ものさし”なのです。
計算式は、PER(倍)=株価÷1株あたりの純利益(EPS)で表すことが多いです。
ちなみに、1株あたりの純利益(EPS)については四季報や、証券会社から簡単に調べることが出来ます。
補足ですが、1株あたりの純利益であるEPSはEarnings Per Shareの略です。
このPERを求める計算式は、色々と変化させることが出来ます。
PER計算式 その①
「株価」と「1株あたりの純利益(EPS)」の両方に発行済み株式総数を掛け合わせると、
PER=時価総額(株価×発行済み株式総数)÷純利益(1株あたりの純利益(EPS)×発行済み株式総数)という計算式が出来ます。
例えば、時価総額1000億で純利益が100億円の会社を買収した場合、純利益が100億円ですので、10年経つと時価総額1000億円を回収できる計算になります。
つまり、PERは自分が投資した投資金額を回収出来るまでの期間とも言えるわけです。
PER計算式 その➁
PER=株価÷1株あたりの純利益の計算式を、株価=にすると、
株価=1株あたりの純利益(EPS)×PERになります。
この場合、PERは投資家の期待値とも言えるわけです。
PERを見る時には、【未来】のPERを見ることが大事
私たちは株価が将来上がってくれることを期待して投資しています。
よって、PERを見る時は【未来】のPERを見ることが大事です。
未来のPERをどうやって導き出すかというと、予想EPSから計算すれば良いのです。
四季報や、証券口座で【予】と書いてある箇所の数字が未来の数字であり、簡単に調べることが出来ます。

PERを見る際に注意すべき事5点
PERは「低ければ低いほど良い!」は間違い
業界平均と比べてPERが低すぎる場合は疑いましょう。
低すぎる場合は何か問題が潜んでいる場合があります。
もしかすと「業績が下方修正されてしまう」や、「何か悪材料が出る」などです。
なので、PERが低すぎる場合は「いまが買い!」ではなく、一度疑ってみましょう。
PERが異常に高い場合は「投資対象から外す」は間違い
もし利益が大幅にダウンしてEPSが小さくっなったとしましょう。
でも、その場合でも株価が必ず下がるとは限らないのです。
もし投資家が売らずに持ち続けると判断した場合、EPSは下がりますが、株価は維持します。
その結果、PERは異常なまでの割高になると思います。
ただ、こういった場合もなぜ高PERになっているのか疑ってみると良いと思います。
例えば、「競合がいないので利益のダウンは一時的なものだろう」と判断したり、「先行投資を行ったため利益は下がったが、将来性はあるから持ち続けよう」とかです。
若くて勢いのある会社はPERが高い傾向にある
若くて勢いのある会社は注目を浴びていることが多いです。
よって期待が乗っかている、若く、業績の良い会社の株価は高くつく傾向にあります。
でも売上がとてつもなく伸びている場合などは、PERだけでは測ることが難しいです。
そういう場合にPEGレシオというのがありますが、PEGレシオについては改めてご紹介します。
PERは1株あたりの純利益(EPS)がマイナスの場合は求めることが出来ない
PERは1株あたりの純利益(EPS)がマイナスの場合は求めることが出来ません。
よって上場したばかりの利益が出ていない会社ではPERを参考にすることが出来ません。
その場合はPSR(株価売上高倍率)などで株価の割安性を見たりしますが、PSR (株価売上高倍率) については別の記事で解説します。
【補足】日本株の平均PERが15倍と入れている根拠
なぜ日本株の平均PERは15倍なんでしょうか?
それは下記の計算式から導き出すことが出来ます。
株式益回り(%)=1株あたりの純利益÷株価×100という計算式があります。
この株式益回りとは、株式益利回りとも呼ばれ、”利回り”のことを言っています。
そして、PERは投資額の回収年数とも言われていますので、下記の式で表すことも出来ます。
株式益回り×PER=100
補足を入れると、
株式益回り(=利回り)、PER(=投資額の回収年数)なので、掛けると100になりますよね。
ちなみに日経平均株価の年間平均利回りは6~7%と言われているので、
先ほどの計算式に当てはめるとPER=100÷6~7%
PERは16.7%~14.29%でだいたい15%くらいになるでしょ?
だから日本株の平均PERは15倍と言われているのです。
まとめ
PERの平均値は業界ごとに違ってきます。
一律でPER15倍で割安、割高を決めないようにしましょう。
後半のPERの計算式は少し難しかったかと思いますが、こんな計算をしなくても簡単にPERは四季報や証券口座で調べることは出来ます。
PERを理屈で理解出来ると投資をする際に自信にもなりますよね。