会社の安全性を知るための指標として固定比率と、固定長期適合率を求めるという方法があります。
両方とも長期的な視点で「設備投資の妥当性(無理な設備投資をしていないか?)」を見た指標になります。
ザックリとしたイメージとして、固定長期適合率の方が固定比率よりも緩く安全性をジャッジしている感じです。
詳細はのちほど紹介します。
固定比率と固定長期適合率の計算式や目安について教えて!
固定比率と固定長期適合率の違いってなに?
流動比率と何が違うの?
カブ太郎くん、任せて!
固定比率と固定長期適合率について分かりやすく解説していくね!
僕は企業の安全性を見る際に必ずチェックしている指標だよ。
安全性の指標|固定比率の意味、計算式、目安をわかりやすく解説
まずは固定比率から解説していきます。
固定比率は下記の計算式から求めることが出来ます。
固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100
固定資産とは現金化するのに要する時間が1年超えの資産のことで、一言でいうと直ぐに現金化出来ない資産のことを言います。
自己資本とは株主から集めたお金や、自分たちで稼ぎ出した利益のことで返済義務のない資産のことです。
細かく言うと少し違いますが、大まかに言うと純資産のことです。
図解すると下記の場所を計算する感じです。

自己資本とは純資産の部から新株予約権と非支配株主持分を差し引いたものになります
自己資本=純資産の部-(新株予約権+非支配株主持分)
つまり固定比率が100%以下であれば、自己資本内で設備投資をしていることが分かり、尚且つ設備投資が上手く行かなかったとしても安全性は高いことが読み取れます。
固定比率を見れば、企業が無理な設備投資をしていないか?が分かります。
固定比率を見れば長期的な視点で設備投資の妥当性(無理な設備投資かどうか)が分かります
目安としては100%以下であると安心できます。
ただ、業界によっては固定比率がどうしても100%を超えてくるような企業も出てきます。
それは、航空会社や鉄道会社、モノづくりをしている会社、新興企業で将来への投資を積極的に行っている会社などです。
このような会社に単純に固定比率を適合させてしまうと「安全性が低いから投資対象ではない」と間違った判断を下してしまう可能性があります。
もしあなたの気になる会社が固定比率100%を超えている場合は、固定長期適合率を見てあげてください。
固定長期適合率については次で詳しく解説していきます。
企業が設備投資をしても利益が出るまでどうしても時間がかかります。
よって、固定比率を見る場合は単年だけでなく複数年(最低でも3年)は見てください。
固定資産とは?
現金化するのに1年超必要な資産のことです。
主な固定資産の項目はこんな感じです。
- 有形固定資産:形ある資産のことで、建物や設備機器など
- 無形固定資産:形ない資産のことで、ソフトウェアや特許権など
- 投資その他の資産:長期資産運用を目的とした資産のこと
過去の固定資産に関する記事を書いていますので詳細を知りたい方は読んでみてください。

安全性の指標|固定長期適合率の意味、計算式、目安を分かりやすく解説
次に固定長期適合率について解説していきます。
固定長期適合率は固定比率よりも「緩く」設備投資の妥当性を見た指標になります。
固定長期適合率は下記の計算式から求めることが出来ます。
固定長期適合率(%)=固定資産÷(固定負債+自己資本)×100
計算式を見てもお分かりのように、固定比率の計算式に固定負債が追加されています。
この意図としては、直ぐに返済義務のない固定負債も自己資本と一緒に安全資産とみなして計算しましょうということです。
ここで重要なポイントを1つお伝えします。
企業が設備投資をしても利益が出るまでどうしても時間がかかる
例えば工場を増築して商品を増産もしくは改良した際に、直ぐに会社の利益に反映されるでしょうか?
どうしても商品が売れて、利益を回収するまでにはタイムラグが生じてしまいます。
つまり、固定比率が100%を下回っているからダメという判断で片付けず、設備投資後の利益の回収も想定して少し緩めに判断したのが固定長期適合率と思っていただければ良いと思います。
この固定長期適合率も目安としては100%以下であることが望ましいです。
こちらも単年ではなく複数年(最低でも3年)で見てください。
【疑問解決】流動比率と固定比率の違いってなに?
ここでもしかすると疑問が生じている方もいらっしゃるかもしれません。
「固定比率と流動比率の違いってなに?」という疑問が。
固定比率は前途した通りなので割愛しますが、流動比率について少し解説を入れさせて頂きます。
流動比率とは一言でいうと企業の短期債務の支払い能力を見た指標になります。
流動比率は下記の計算式から求めることが出来ます。
流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100
流動資産とは1年以内に現金化出来る資産のことで、流動負債とは1年以内に返済義務のある負債のことです。
つまり流動比率のパーセンテージが大きければ大きいほど、短期債務(1年以内に返済義務のある負債)の返済能力に余裕があるということが読み取れます。
目安としては150%以上あると安心です。
流動比率については過去記事でまとめましたのでご興味がある方は読んでみてください。

【実践】固定比率/固定長期適合率を自分で計算してみよう!
では実際に固定比率と、固定長期適合率を自分の手で計算をしてみましょう!
すごく簡単だから一緒に計算してみましょう!
固定比率の計算方法
下記の有価証券報告書を参考に一緒に固定比率を計算してみましょう。
前連結会計年度(2020年2月29日)の固定比率
- 固定資産:100,704(百万円)
- 自己資本:35,712(百万円)=35,798(純資産合計)-19(新株予約権)-67(非支配株主持分)
固定比率を求めるための計算式は下記の通りになります。
100,704÷35,712×100=281.99%
当連結会計年度(2021年2月28日)の固定比率
- 固定資産:95,573(百万円)
- 自己資本:33,221(百万円)=35,142(純資産合計)-75(新株予約権)-1,846(非支配株主持分)
固定比率を求めるための計算式は下記の通りになります。
95,573÷33,221×100=287.69%

固定長期適合率の計算方法
下記の有価証券報告書を参考に一緒に固定長期適合率を計算してみましょう。
前連結会計年度(2020年2月29日)の固定長期適合率
- 固定資産:100,704(百万円)
- 自己資本:35,712(百万円)=35,798(純資産合計)-19(新株予約権)-67(非支配株主持分)
- 固定負債:61,581(百万円)
固定長期適合率を求めるための計算式は下記の通りになります。
100,704÷(35,712+61,581)×100=103.51%
当連結会計年度(2021年2月28日)の固定長期適合率
- 固定資産:95,573(百万円)
- 自己資本:33,221(百万円)=35,142(純資産合計)-75(新株予約権)-1,846(非支配株主持分)
- 固定負債:54,849(百万円)
固定長期適合率を求めるための計算式は下記の通りになります。
95,573÷(33,221+54,849)×100=108.52%

まとめ
固定比率と固定長期適合率について解説してきました。
両方とも会社の安全性を知る上で大事な指標になってきます。
私の投資スタイルとは1つの会社へ投資したら中長期に保有することが多いです。
中長期の間で会社の倒産リスクを最小限に抑えたいので、固定比率と固定長期適合率は企業分析の時に必ずチェックするようにしています。